第9巻 495P 和語灯録 了恵輯緑

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a01 大悲等同にしてすこしの差別なし。同體の大悲のゆ
a02 へに。一佛の所説はすなはち是一切佛の化なり。こ
a03 こをもてまづ彌陀如來。稱我名號下至十聲若不生者
a04 不取正覺と願して。その願成就してすてに佛になり
a05 給へり。又釋迦如來は。この五濁惡世にして。惡衆生
a06 惡見惡煩惱惡邪無信さかりなる時。彌陀の名號をほ
a07 め。衆生を勸勵して稱念すれはかならず往生する事
a08 をうととき給へり。又十方の諸佛は。衆生の釋迦一
a09 佛の所説を信せさらん事ををそれて。すなはちとも
a10 に同心同時にをのをの舌相を出して。あまねく三千
a11 世界におほひて。誠實のことはをとき給ふ。なんだ
a12 ち衆生。みな釋迦の所説所讃所證を信すべし。一切
a13 の凡夫罪福の多少時節の久近をとはす。たたよく上
a14 は百年をつくし。下は一日七日十聲一聲にいたるま
a15 で。心をひとつにしてもはら彌陀の名號を念すれは。
a16 さためて往生する事をうといふ事を信すへし。か
a17 ならすうたかふことなかれと證誠し給へり。かる
b01 がゆへに人につゐて信をたつといへり。かくの
b02 こときの。一切諸佛の。一佛ものこらず同心に。あ
b03 るひは願ををこし。あるひはその願をとき。あるひ
b04 はその説を證して。一切の凡夫念佛して决定往生す
b05 へきむねをすすめ給へるうへには。いかなるほとけ
b06 の又きたりて往生すへらすとはの給ふべきぞとい
b07 ふことはりをもて。ほとけきたりての給ふともおと
b08 ろくへからすとは信する也。ほとけなをしかり。いは
b09 んや地前地上の菩薩をや。いはんや小乘の羅漢をや
b10 と意えつれは。まして凡夫のとかく申さんにより
b11 て。一念もうたかひおとろく心あるへからすとは申
b12 なり。おほかた此信心の樣を。人の意えわかぬとお
b13 ほゆる也。心のそみそみと身のけもいよだち。なみ
b14 たもおつるをのみ信のおこると申すはひが事にてあ
b15 る也。それは歡喜隨喜悲喜とぞ申へき。信といは
b16 うたかひに對する意にて。うたかひをのぞくを信と
b17 は申すへき也。みる事につけても。きく事につけて