法然上人伝全集 186P 法然上人行状絵図 勅伝

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a01 時行水を用けるとかや。正月一日にもなりにければ、死せずしては、往生すべきみちなきゆへに、
a02 尊願は正月一日の祝には、臨終の儀式をならして、としひさしくなれり。日來のあらましたがはず
a03 して、今日往生すべき故に延引しけるとよろこびて、しきりに念佛しけれども、その日もすぎ次の
a04 日も又くれぬ。只今臨終すべき心ちもなかりければ、上人の御文を又とりいだして、往生ののちは
a05 思出べきなり。かならず極樂にまいりあへと自筆の御文にのせられながら、いそぎまいらむと心を
a06 つくし侍に、をそくむかへさせ給ことの心うく侍よし、連日になげき申けるが、正月十三日の夜の
a07 ゆめに來十五日午尅に迎べきよし、上人きたりてつげ給とみる。さめてこれをかたり歡喜のなみだ
a08 をながしけり。件の日になりにしかば、上人より給たる袈裟をかけ、念珠をもちて西にむかひ端坐
a09 合掌して、高聲念佛數百反をとなへ、午の正中に、念佛とともに息たえぬ。紫雲空にそびき、異香
a10 室にみつ。荼毘の庭にいたるまで、そのにほひなをきえざりけり。腹をきりて後水漿をたちて、五
a11 十七日氣力つねのごとくして、いたむ所なく、つゐに往生をとげにける不思議の事なり。抑いまの
a12 するところの自害往生、水漿をたちてのち、五十餘日をふること、殆信をとりがたしといへども、
a13 かの子孫、上人の御消息、ならびに念珠袈裟等を相傳して、披露する事世もてかくれなし。ただこ
a14 れ尊願が不思議の奇特をのこするばかりなり。餘人さらにこのみ行せよとにはあらず。凡上代上機
a15 の事はしばらくこれをさしをく、末代當世の行者は機根よはきゆへに、たとひ思たつものありとも